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Tips – 防災設備 –

消火用スプリンクラーには設置基準がある?【2】〜医療機関・福祉施設編と消防法改正についても解説〜

スプリンクラーとは、消防法で設置基準が定められているほど、最も採用されている消防設備です。天井から顔をのぞかせるスプリンクラーヘッドが1〜3個ほどで十分に鎮火できるため、有効性が高く認められています。
消火用スプリンクラーには設置基準がある?【1】の記事では、施設ごとの設置基準とスプリンクラーの種類をご紹介しました。今回の記事では、ちょっと複雑な医療機関と福祉施設の設置基準と消防法改正の内容についても解説していきます。

スプリンクラーの基礎知識や種類などは、以下の記事をご参照ください。

車椅子とベッドの画像

医療機関・福祉施設の特徴ごとに違うスプリンクラー設置基準

スプリンクラーの設置基準は医療機関や福祉施設に及ぶと、施設の特徴によってさらに複雑化します。早速紹介していきましょう。

【医療機関】病院・診療所など

病院・診療所などの医療機関は少し複雑です。医療機関の種類によって、スプリンクラーの設置基準が異なります。
ここでは以下の医療機関について確認していきます。

◆特定診療科を有する有床医療機関
◆特定診療科を有しない有床医療機関
◆無床診療所

病院のイラスト

【特定診療科を有する有床医療機関の場合】

特定診療科とは、内科・整形外科・リハビリテーション科などの避難が困難な患者と考えられる診療科です。有床とは、4人以上の入院設備のことです。
以上の施設では、次のような設置基準が定められています。

特定診療科を有する有床医療機関に該当する場合、階層を問わず、全フロアにスプリンクラーを設置する必要があります。

POINT:消防法により、避難の困難な患者が多いと判断された特定診療科および、入院患者がいる場合は、火災の初期消火は絶対条件になります。

【特定診療科を有しない有床医療機関の場合】

以上の施設では、次のような設置基準が定められています。

・床面積6,000平米以上の一般階(1階から3階まで)
・床面積1,000平米以上の地階・無窓階
・床面積1,500平米以上の中層階(4階から10階まで)
・11階以上の高層階が存在する場合は建物の全フロア

POINT:入院設備を持っている医療機関でも、特定診療科を設置していない場合は設置基準が緩くなります。ただし、平屋建ての場合は6,000平米以上であってもスプリンクラーの設置義務がありません。

【無床診療所の場合】

無床診療所とは、入院設備を持たない医療機関のことです。無床診療所の場合、以下のような設置基準が定められています。

・床面積6,000平米以上の一般階(1階から3階まで)
・床面積1,000平米以上の地階・無窓階
・床面積1,500平米以上の中層階(4階から10階まで)
・11階以上の高層階が存在する場合は建物の全フロア

POINT:無床診療所の場合、入院患者がいません。そのため、スプリンクラーの設置基準は通常の集会施設などと同様になります。

【福祉施設】介護老人保健施設・養護施設など

介護老人保健施設や養護施設などの福祉施設にも、複雑な区分が存在し、福祉施設の種類によって、スプリンクラーの設置基準が異なります。
ここでは以下の福祉施設について確認していきます。

◆老人・乳児を対象とする福祉施設
◆特定の救護施設・障害児施設・障害者施設
◆一般の救護施設・障害児施設・障害者施設
◆簡易な福祉施設

福祉施設のイラスト

【老人・乳児を対象とする福祉施設の場合】

介護老人福祉施設や乳児院などの施設では、次のような設置基準が定められています。

階層を問わず、全フロアにスプリンクラーを設置しなければなりません。

POINT:ご年配の方を対象とする施設については、要介護者が含まれる施設に限られますので注意してください。火災発生時に自力で避難できない人々がいる施設と判断されるため、スプリンクラーの設置基準は通常と比べて厳しいです。

【特定の救護施設・障害児施設・障害者施設の場合】

以上の施設では、次のような設置基準が定められています。

階層を問わず、全フロアにスプリンクラーを設置しなければなりません。

POINT:「特定の」とは、入所者の8割以上が「介助がなければ避難できない者」である場合を指しています。避難に困難を伴いますから、当然、スプリンクラーの設置基準は厳しいです。

【一般の救護施設・障害児施設・障害者施設の場合】

以上の施設では、次のような設置基準が定められています。

床面積が275平米以上のフロアだけにスプリンクラーを設置すればOKです。

POINT:介助がなければ避難できない者の割合が8割未満の場合、スプリンクラーの設置基準は少し緩和されます。

【簡易な福祉施設の場合】

通所介護サービス、保育所といった施設では、次のような設置基準が定められています。

・床面積6,000平米以上の一般階(1階から3階まで)
・床面積1,000平米以上の地階・無窓階
・床面積1,500平米以上の中層階(4階から10階まで)
・11階以上の高層階が存在する場合は建物の全フロア

POINT:入所や宿泊を伴わないことを原則とした福祉施設は、一般的な集会施設と同じ基準になっており、それほど厳しい基準にはなっていません。

以上、簡単ではありますが、施設ごとのスプリンクラー設置基準を紹介してきました。ご覧いただいたように、床面積、階層など、さまざまな条件によって設置義務の有無が決まるため、上記に該当する施設でも、必ずしもスプリンクラーの設置義務があるとは限りません。建物の用途によっても、スプリンクラーの設置基準は異なりますので、しっかり確認してください。

医療施設、福祉施設等における消防法改正について

2012年(平成24年)5月広島県福山市のホテル火災や、2013年(平成25年)2月長崎県長崎市の認知症高齢者グループホーム火災等を受け、入居・宿泊施設に関連した内容の消防法が改正され、2015年(平成27年)4月1日より施行されました。
ここからは、医療施設・福祉施設等において改正された消防法の内容について説明してまいります。

消防法改正の背景

近年、全国的に、夜間就寝施設において多数の死傷者を伴う火災の発生が相次いだこと、特に、2013年(平成25)10月11日に発生した福岡市有床診療所火災においては、死傷者の多くが自力での避難が困難な状態にあったと考えられました。このことから、避難のために患者の介助が必要な有床診療所・病院においては、人力のみに頼ることなく、自動的に初期消火、119番通報、延焼防止等を行える体制を整える必要があることを踏まえ、消防関係法令が改正されました。

福祉施設等火災を受け消防用設備等の設置基準が改正

消防法の改正によりスプリンクラーや自動火災報知設備の設置基準も変更になっています。この記事を読んでいる方で、介護老人保健施設やホテルや旅館などを管理している法人様は、新たに導入を検討しなければならない施設も多いのではないでしょうか。
今回の改正で義務付けされた設備等を大きくまとめると以下のようになりますので、新規導入時のご参考になさってください。

◆消火設備等の設置基準改正の内容

防火対象物の用途区分の見直し
施行令別表第1(主に福祉施設関係)の用途区分の変更
スプリンクラー設備
社会福祉施設等で、 スプリンクラー設備の設置を延べ面積に関わらず義務付け
※一部例外あり
自動火災報知設備
小規模なホテル・旅館、 病院・診療所、 社会福祉施設等で、 自動火災報知設備の設置を延べ面積に関わらず義務付け
消防機関へ通報する火災報知設備
社会福祉施設等で、 自動火災報知設備と火災通報装置の連動化を義務付け

スプリンクラーの設置基準における主な改正内容

それでは、消防法改正を受けて変更になったスプリンクラーの設置基準を見ていきましょう。スプリンクラーの設置義務はこれまで延べ床面積275平方メートル以上の防火対象物に限定されていました。消防法の改正により、延べ床面積275平方メートル以下でも入院設備のある診療所(有床診療所)など、人が滞在する施設には設置が求められるようになりました。

具体的には、介護保険施設や乳児院等、高齢者や乳児の生活する施設全般、また救護施設や障がい者支援施設等、介助がなければ避難できない者を概ね8割以上入所させている施設が新たに加えられています。さらに消防法の改正で面積に関係なくスプリンクラーの設置が義務付けられている施設もあります。国は医療機関において避難に介助が必要な患者がいる4床以上の有床診療所に面積に関係なくスプリンクラーの設置を義務付けました。ただし「 スプリンクラー設備を設置することを要しない構造」の施設では取付け義務はありません。

スプリンクラーの基礎知識や種類などは、以下の記事をご参照ください。

スプリンクラーの設置が義務化されている施設

従来スプリンクラー設置が義務付けられていたのは、延べ床面積が6,000平方メートル以上の診療所のみでした。しかし消防法の改正で上述のように入院設備のある診療所(有床診療所)などの医療機関において、避難に介助が必要な患者がいる4床以上の有床診療所は面積に関係なくスプリンクラーの設置を義務付けられています。条件に該当する新設の診療所では2016年度から、既存の施設は2025年までの設置が求められています。
しかし全国の対象施設ではまだ未設置のままの施設もあり、導入の工期を考えると急ぎの工事依頼が増えています。地域により変動しますが補助金の制度も用意されていますのでご利用いただける間に対応されることをおすすめいたします。

設置が義務化に該当しない施設

「避難に介助が必要な患者がいる4床以上の有床診療所」とは、病院や患者を入院させる診療所等などが該当します。そのため診療科のみの施設は該当しません(産科・婦人科・産婦人科・眼科・耳鼻咽喉科・皮膚科・歯科・肛門外科・泌尿器科・小児科・乳腺外科・形成外科・美容外科)。また延焼を抑制する施設構造やそういった建材で建てられている施設も該当しません。しかしこの条件は複雑ですので、お困りの方はまずは専門家へご相談ください。

自動火災報知器の設置基準における主な改正内容

併せて自動火災報知設備の設置内容も改正されています。病院をはじめホテル・旅館等、利用者を入居・宿泊させる施設に対してこれまでは延べ面積300平方メートル以上に設置が義務付けられていました。改正により延べ面積に関わらず自動火災報知設備の設置が義務となりました。さらに自動火災報知設備の作動と連動して、消防機関への通報が起動することも義務付けられました。

自動火災報知設備とは

自動火災報知設備とは、感知器が熱や煙を自動的に検知して、警報ベル等で建物内にいる人たちに火災を知らせるシステムのことです。さらに既存の設備と連動させることによって防火シャッターを作動させたり、アナウンスを流したりすることもできます。

火災発生時にもっとも重要なのは初期対応のため、小火のうちに自動火災報知設備が正常に作動することが、人命や消火活動に大きく関わってきます。特に病院や福祉施設等では足腰が不自由な方や小さな子供も大勢いますので、適切な配置によって、最小限の被害に食い止める対策をしておきましょう。

自動火災報知設備の設置が義務化されている施設

これまで 自動火災報知設備の設置は、延べ300平方メートル以上の病院や旅館等、利用者を入居・宿泊させる施設に限定されていました。しかし消防法の改正により、面積に関わらず設置が必要となりました。

新たに自動火災報知設備の設置が必要となる延べ面積300平方メートル以下の防火対象物については、特定小規模施設用自動火災報知設備の設置が可能です。既存施設は、2018年3月末日まで自動火災報知設備の取り付け経過措置がとられていました。無線式のものもあり、通常の自動火災報知機と比べ、設置場所の基準が緩和されており、配線工事が不要なものもあります。

宿泊施設等の画像
病院、診療所、助産所、老人デイサービスセンター、保育所、通所障障害者福祉施設、旅館、ホテル、宿泊所 等

「消防機関へ通報する火災報知設備」の連動が義務に

消防法改正のポイントとしては自動火災報知設備の設置だけでなく、感知器の作動と連動して消防機関へ自動的に通報する設備の設置が義務付けられたことです。火災が発生した際、感知器が作動すると連動して119番通報されることで、火元の早期発見ができたり、手元に連絡手段がなかった場合でも、通報の遅れによる被害拡大の防止ができるようになります。
一方で、自動火災報知設備の誤作動を防ぎ、通報の信頼性を確保するために、設備の定期的なメンテナンスや点検を行ったり、取扱い方法を熟知しておくことも大切です。設置の際にガイドラインを作成しておくことが望ましいでしょう。

スプリンクラー設備の導入はどこに頼む?

スプリンクラー設備に必要な資格は、消防設備士です。消防設備士の1類(甲・乙)が、スプリンクラーに該当します。そのため、消防資格を持った工事業者のいる防災設備会社に依頼する必要があります。
なお、建物設備全体の管理やメンテナンス、改修等のサービスを提供している会社であれば、電気設備や空調設備などと一緒に相談にのってもらえる可能性があります。

まとめ

今回は、医療機関や福祉施設における消火用スプリンクラーの設置基準を紹介してきました。また、消防法改正についても触れてきましたがご理解いただけましたでしょうか。様々な施設がある中でも、自力で避難が困難な方々の多いとみなされるこれらの施設は、基準が複雑になります。これから消防用設備の導入をご検討の法人様、もしくは、消防設備士の資格を取ろうと思っている方にとって何かのお役に立てていましたら幸いです。

  • スプリンクラーの設置基準は、医療機関・福祉施設において、施設の特徴ごとに複雑化します。
  • 2015年4月1日に、人が入居もしくは宿泊している施設に関連した内容の消防法が改正、施行されました。
  • 消防法改正により、スプリンクラーや自動火災報知設備の設置基準が変更になっています。
  • スプリンクラーは、延べ面積375平方メートル以下でも入院設備のある診療所(有床診療所)など、人が滞在する施設には設置が求められるようになりました。避難に介助が必要な患者がいない場合や、火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造を有する施設は除きます。
  • 自動火災報知設備の設置内容も改正され、利用者を入居・宿泊させる施設に対しては、延べ床面積にかかわらず、自動火災報知設備の設置が義務となりました。さらに自動火災報知設備の作動と連動して、消防機関への通報が起動することも義務付けられました。
  • スプリンクラーの導入は、消防資格を持った工事業者のいる防災設備会社に依頼する必要があります。
    すでに建物設備全体の管理やメンテナンス、改修等のサービスを提供している会社であれば、電気設備や空調設備などと一緒に相談にのってもらえる可能性があります。
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