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台風シーズンに備える企業のための非常用発電機の点検とは

公開日:2023年10月13日

更新日:2025年08月29日

台風シーズンに備える企業のための非常用発電機の点検

台風シーズンが迫る今、企業にとって非常用発電機の点検は避けられない課題です。機械自体が比較的安価で多くの企業で使用されている「ディーゼルエンジン非常用発電機」と、振動面・騒音面に優れ安定した電力供給が可能な「ガスタービンエンジン非常用発電機」がありますが、どちらを使っていても点検が欠かせません。

今回は、台風時に起こりやすい非常用発電機の故障や台風シーズンに備えた点検の重要性、点検内容などをわかりやすく解説します。台風シーズンでも安定して事業を継続できるようにするために、この記事をぜひ参考にしてみてください。

1| 台風時に起こりやすい非常用発電機の故障

台風時に起こりやすい非常用発電機の故障

台風の際は、落雷や停電により、非常用発電機の故障が発生しやすいです。

台風時には雷雨となることもあります。たとえ雷が直撃しなかったとしても、周辺に落ちた落雷が地面を伝って非常用発電機の電子部品に悪影響を及ぼすケースが想定されます。

また、台風による停電で非常用発電機が自動運転した際にも問題が発生しやすいです。自動運転時に非常用発電機が整備不良の状態(不具合があるかどうかを確認できていない状態)ですと、そのときに初めて故障に気付くことがあります。

具体的には、以下のような症状が出やすいです。

【ケース1】落雷により、非常用発電機の電子部品が故障
落ちた雷が地面を伝うことで、非常用発電機の電子部品がショートする
→それにより制御基板が故障すると、自動運転機能や自動停止機能が正常に働かなくなる。
【ケース2】停電時に、非常用発電機の整備不良による故障に初めて気付く
  • 冷却水(エンジンを冷やし、オーバーヒートを防ぐための液体)を長期間交換していない状態で、非常用発電機が自動運転を開始
    →経年劣化したホースやラジエーター本体から水漏れする
  • 制御装置や水温センサーが正常に機能していない状態で、非常用発電機が自動運転を開始
    →エンジンの温度が正確に判断できないため冷却機能が低下し、冷却水を十分に冷やせなくなるため、オーバーヒートになりやすくエンジン全体がダメージを受ける

1-1| 定期的な点検・整備が故障を防ぐ

上で紹介したケース2のように、いざという時、故障に初めて気付いたら、非常用発電機を設置していた意味がありません。

 

非常用発電機の故障を防ぐために不可欠なのが、定期的な点検・整備です。点検や整備を定期的に行っていれば、故障につながる可能性がある不具合に早い段階で気付けたり、たとえ故障箇所が見つかっても台風シーズン前に修理を完了できたりします。

2| 台風シーズン前に非常用発電機を点検する重要性

台風シーズン前に非常用発電機を点検する重要性

台風による停電時にとても重要な役割を果たすのが、平常時には使われることがない非常用発電機です。

台風は日本において毎年発生する自然災害の一つであり、その影響は非常に広範に及びます。特に停電被害は、人々の日常生活や企業の事業活動に多大な影響を及ぼします。

台風が接近すると、強風による電柱の倒壊や飛ばされた木の枝やゴミの電線への接触などが発生し、電力会社からの電力供給が途絶える可能性が高まります。しかしながら、自社の工場やオフィスなどに非常用発電機を設置しておくことで、停電復旧までに当面必要となる電力を社内でまかなうことができます。いざという時に「非常用発電機が正常に機能しなくて、うまく発電できない」といったことがないよう、台風シーズン前に非常用発電機を点検しておきましょう。

使用状況や置かれている環境などにもよりますが、設置から20年ほど経過すると非常用発電機の故障が発生しやすくなるといわれています。設置から20年ほど経ったものをお使いの場合には、以下の理由でメンテナンスが必須です。

  1. 部品の劣化により、故障のリスクが高まります。
  2. 古いエンジンオイルが、エンジンにダメージを与える可能性があります。
  3. 冷却水の劣化により、エンジンの冷却効果が低下します。

メンテナンスを怠ると、故障が起きやすくなるだけでなく、場合によっては修理が不可能な状態に陥るリスクもあります。

なお、法定点検の時期は非常用発電機の設置時期から起算するため、導入時期によっては、定期点検と台風の時期のタイミングがずれる場合があります。ただし、点検自体は、6ヶ月に1回以上行うことが推奨されているので、点検の回数が増える分には問題ありません。

万全な体制で台風シーズンを迎えられるよう、非常用発電機の点検スケジュールをあらかじめ決めておくことをおすすめします。たとえば、9月に台風被害を受けることが多い地域の場合には、8月のお盆休み前後に点検を予定しておくとよいでしょう。また、台風時に非常用発電機を使わなかったとしても、上で紹介したケース1のような落雷による電子部品のショートなどの故障が発生している可能性もあるので、台風の後にも点検するのが望ましいです。

非常用発電機の安全な運用に向け、通常の点検や台風前後の点検が適切に実施できるよう、点検業者と事前に契約を結んでおくことをおすすめします。

2-1| BCP(事業継続計画)としても有効

BCP(事業継続計画)とは、企業が緊急事態に遭遇した場合に、損害を最小限に抑え、事業の継続もしくは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。

非常用発電機は、BCP(事業継続計画)においても重要な要素といえます。なぜなら、災害時や緊急事態において、企業にとって重要な業務を継続させるための電力供給を確保する役割を果たしているためです。

BCP対策の一環として、非常用発電機を設置することで、停電時においても重要な業務や企業活動を継続できます。また、非常用発電機があれば、PCやスマホなどの通信手段を用いるための電源・電力も確保でき、情報の保護や回復、従業員の安否確認、従業員への指示伝達、取引先との連絡などがスムーズに行えます。その結果、企業にとっての損害を最小限に抑えられるでしょう。

3| 【担当者必見】非常用発電機の点検内容

【担当者必見】非常用発電機の点検内容

非常用発電機を点検する重要性を知ったうえで気になるのが、どのような点検をする必要があるのかです。

災害時における電力供給の要である非常用発電機の点検内容は、多岐にわたります。ここでは、非常用発電機の点検内容に焦点を当て、特に電気系統と機械部分の各点検項目について詳しく解説します。

なお、電気系統のチェックポイントは、電流や電圧、接続部の状態などです。機械部分の点検項目には、エンジンの状態や冷却システムがあります。

3-1| 電気系統のチェックポイント

非常用発電機の点検は月次と年次の2種類があり、それぞれに特定の項目が設定されています。

非常用発電機の運用において、バッテリーは不可欠な要素です。この非常用発電機は独立して発電することが可能ですが、起動する際には蓄電池からの電力供給が必要です。バッテリーが消耗すると、エンジンの起動が不可能になります。そのため、蓄電池は定期的なメンテナンスや交換が必要です。特に、バッテリーが寿命を迎えた場合、非常用発電機は機能しなくなるリスクがあります。

周期ごとの点検項目

点検周期 点検項目
月次点検 発電機と励磁装置の外観確認
年次点検 ・自動起動・停止装置の確認
・接続箇所と接地面の緩み確認
・内部蓄電池、接続、絶縁抵抗値、起動・停止装置の状態
・5分間のエンジン試運転

電気事業法では、発電機が適切に運用・維持されることが求められます。消防法では点検内容と結果の報告が必須。建築基準法にも規制があります。

法令に基づく電気系統のチェック項目

  1. 電気主任技術者による点検
    電気主任技術者は、電気設備の定期点検、竣工検査、および故障対応を行う専門家です。定期点検では、電気設備の安全性や機能を確保するために、様々な点検項目をチェックし、必要に応じて修理やメンテナンスを行います。
  2. 接地抵抗測定
    接地抵抗測定は、電気設備の接地システムが適切に機能しているかを確認するための測定です。接地システムは、漏電や過電流が発生した際に電流を安全に地面に流す役割があります。
  3. 絶縁抵抗測定
    絶縁不良(漏電)が発生していないかどうかの確認ができます。
  4. 始動試験
    始動試験は、電気設備の動作を確認するための試験です。電気設備が正常に動作するかどうかを検証し、問題がある場合は修理や調整を行います。
これらの点検が災害時の安全な電力供給に直結します。

3-2| 機械部分の点検項目

非常用発電機の点検において、機械部分の点検項目は以下の通りです。

点検項目
エンジンの状態 ・油量の確認と不足時の給油
・外観の点検(変形、損傷、腐食等の有無)
・空ぶかしによるエンジン試運転(約5分間)
冷却システム ・ラジエーター液(冷却水)の漏れや経年劣化による変化の確認
・冷却水タンクの外観点検(変形、損傷等の有無)

定期的な点検とメンテナンスを行うことで、非常用発電機の寿命を延ばし、安全性を向上させることができます。

4| 【予備知識】非常用発電機の点検に関するポイント

【予備知識】非常用発電機の点検に関するポイント

非常用発電機の点検は、台風シーズンへの備えとしてだけでなく、消防法をはじめとする法令の遵守や、地域住民への電源供給・非常用発電機を備えた社屋の避難所としての開放などによる企業の信頼性向上という観点からも重要です。

予備知識として知っておきたい、非常用発電機の点検に関するポイントは以下の3点です。

  1. 法令に基づく点検が義務付けられている
  2. 毎年点検する必要がある
  3. 資格保有者に点検を依頼する必要がある

それぞれについて、簡単に紹介します。詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

4-1| 法令に基づく点検が義務付けられている

非常用発電機は、いくつかの法令に基づく点検の実施や点検結果の報告などが義務付けられています。中でも押さえておくべきなのが、「消防法」「建築基準法」「電気事業法」の3つの法令です。義務を果たせなかった場合、罰金や拘留が科されたり、設備の使用制限命令が出されて社屋などの電源を使用できなくなったりする可能性があります。法的リスクの回避にも、点検・報告を適切に実施することが重要です。

各法令における点検義務の概要を表にまとめましたので、ご確認ください。

電気事業法 消防法 建築基準法
対象設備 事業用電気工作物に該当する自家発電設備 消防用設備等の非常電源として設置される自家発電設備 建築設備の予備電源として設置される自家用発電装置
設備具体例 発電所(火力・水力・燃料電池・太陽電池・風力)、蓄電所、変電所、送電線路、配電線路、需要設備など 特定防火対象物(劇場、映画館、ホテル、病院、学校など)に設置された非常用発電機 特定建築物(病院、学校、マンション、大規模なオフィスビルなど)に設置されている非常用発電機
基準に基づく点検 保安規則による検査のガイドライン 非常用電源用の公式な点検基準と手続き 建築関連法規に準拠した点検基準
検査記録の保存 半年ごとと年1回の点検結果を文書化 各種設備に該当する検査の結果を記録
点検結果の報告義務 非常用電源点検の報告書を添付 6ヵ月~1年単位での報告が必要

出典:https://nega.or.jp/publication/press/2018/pdf/2018_10_23.pdf

4-2| 毎年点検する必要がある

非常用発電機の点検は、火災や地震などの非常時に、非常用発電機を通して各設備が確実に正常に稼働する状態を維持するために重要です。なお、メーカー推奨の定期点検には、3ヶ月毎から8年毎まで6つの点検があり、それぞれの間隔で点検項目が分かれています。

 

法令点検のうち、実施頻度について特に注意が必要なのが、消防法に基づく「負荷試験」「内部観察」「予防的保全策」の3つです。

負荷試験 火災や地震といった災害時などの不測の事態に備え、非常用発電機を定格出力の30%以上で運転し、実際の動作環境に近い環境下における運転性能を確認する試験
内部観察 非常用発電機を分解した上で、非常用発電機のエンジン内部を目視または内視鏡などを用いて確認・観察する点検作業
予防的保全策 非常用発電機の機能を維持し、運転性能を確認するための点検作業や部品交換などの保全作業

負荷試験には、非常用発電機とつながっている機器を実際に稼働させて負荷をかける「実負荷試験」と、専用の模擬負荷試験装置をつなげて負荷をかける「模擬負荷試験」があります。実負荷試験の場合には一時的に停電させる必要があることから、停電の必要がない模擬負荷試験の実施が主流となっています。

 

予防的保全策を講じていれば、負荷試験または内部観察は6年に一度で構いません。ただし、その場合でも予防的保全策は毎年講じる必要があります。

負荷試験、内部観察、予防的保全策はいずれも「点検」ではあることには違いありません。つまり、毎年何かしらの点検が必要です。

4-3| 資格保有者に点検を依頼する必要がある

非常用発電機の点検には専門的な知識と技術が必要です。点検作業を行うために必要な資格としては、「消防設備士または消防設備点検資格者」「自家発電設備専門技術者」「電気主任技術者または電気管理技術者」の3つがあります。

  1. 消防設備士または消防設備点検資格者
    消防法に基づく負荷試験を実施するために必要な資格です。
  2. 自家発電設備専門技術者
    自家発電機の知識と技能を持つことが求められる資格で、内燃力発電設備協会(内発協)が認定しています。
  3. 電気主任技術者または電気管理技術者
    電気事業法に基づく点検を実施するために必要な資格です。

非常用発電機の負荷試験を実施する際は、消防設備士または消防設備点検資格者と自家発電設備専門技術者の資格を持つ業者に依頼することが望ましいです。また、電気事業法に基づく点検の場合は、電気主任技術者または電気管理技術者が実施することが求められます。

点検を行う際には、資格取得状況を確認し、安心して任せられる業者を選ぶようにしましょう。

5| まとめ

まとめ

台風シーズンに備えて自社の工場やオフィスなどにある非常用発電機を点検・整備しておけば、台風による雷雨で停電が発生しても、停電復旧までに当面必要となる電力を社内でまかなうことができます。事業を安定的に継続できるため、BCP(事業継続計画)としても有効です。

一方で、点検・整備が不十分だと、万が一の際に非常用発電機が正常に動かないリスクがあります。そうした事態を避けるため、本格的な台風シーズンを迎える前にきちんと点検し、不具合を見つけた場合には早急に修理を依頼することをおすすめします。

点検内容は年1回の電気系統と機械部分が主ですが、消防法に基づく負荷運転試験なども不可欠です。どういった点検をいつ実施するかの計画を立て、適切に点検することで、台風シーズンに備えましょう。

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