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Tips – 電気設備 –

電気設備の保守管理に必要な基礎知識

公開日:2023年02月18日
更新日:2024年03月18日

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事業を運営する上で電気エネルギーを活用した設備は必要不可欠です。ビルや店舗、福祉施設など、ほとんどの建物に付随し重要な役割を持っていますが、その役割や種類は様々あり、事故防止のためのルールなども存在します。

この記事では、電気設備を初めて学ぶ人や、保守管理業務に携わっている担当者が電気設備を管理する上で知見が広がるような内容を取り上げて解説していきます。

電気設備の不具合や故障などのトラブルによる損害を最小限に抑えるためのポイント、省エネ設備を選ぶポイントや最新技術を取り入れた効率的なエネルギー活用方法についても紹介していきます。この記事で電気設備の保守管理における全体像を把握できるようになりましょう。

飛べるもくじ

1| 電気設備の分類と建物施設における電気設備

電気設備と言ったらなにを思い浮かべますか。ここでは主な電気設備の分類や種類と役割を理解しながら、建物設備・店舗における電気設備について取り上げていきます。

1-1| 電気設備の定義と概要

電気設備は、主に電力会社の設備である発電設備(電気を作る)と送配電設備(電気を送る)、そして電気を使う側の設備である構内電気設備と、大きく3つに分類されます。

発電設備で発電された電気は様々な電気設備を使って「送電」「変電」「配電」を経て届けられます。このように、さまざまな電気設備が私たちの生活の中で使いやすいように変電、配線されて社会基盤となっています。

電気設備の分類の画像

1-2| 電気設備の役割と重要性

電気を使うための設備である構内電気設備(以下、電気設備)は、建物や施設の中で電気を送り届けるための設備を指します。これには照明や防災設備などが安全で快適に使用できるようにする役割があります。電気設備は建物に備わっている様々な機械や装置の機能を稼働させるための力(エネルギー)として使われるため、一般家庭や建物施設・店舗の快適な環境を整えていくうえでなくてはならない重要な設備です。

 

身近な電気設備といえば、照明器具をはじめ電化製品や什器、生産機械などがあります。建物や施設内で様々な場所に電気を送り届ける為の設備や空調、防災用の設備も含むので、とても広範です。

電気設備の種類 役割 具体例
発電設備 電気を作る 水力発電、火力発電、風力発電、太陽光発電、原子力発電、蓄電池
送配電設備 電気を送る 発電設備で作られた電気の通路(電線路)、及び使用する機器にその電気を変電、配電する設備
構内電気設備 電気を使う 建物や施設の中で実際に電気を利用するための設備、機器類(モーター、照明、コンセントなど)

そして発電設備から送配電設備で電気設備を結んでいる全体の設備を「電気工作物」と言います。

1-3| 電気工作物の種類

表が電気工作物の種類です。

区分 対象 よくある建物 具体的な設備例
一般用電気工作物 ・600V以下で受電するもの
・600V以下で発電する*小出力発電設備
・一般住宅家屋
・小規模店舗
・小規模事業所
・コンビニ
ソーラーパネル
事業用電気工作物 自家用電気工作物
(需要設備)
小規模事業用電気工作物 ・病院
・福祉施設
・停電被害を回避
・軽減するために、非常用発電機を設置している建物
出力20㎾未満の風力発電設備
出力10kW以上50㎾未満の太陽電池発電設備
上記以外の600Vを超える電圧で受電するもの ・工場
・ビル
・病院
・福祉施設
・学校
受変電設備(キュービクル設備)
電気事業用電気工作物
(電気事業者が電気の供給を行うために設置する電気工作物)
一般電気事業、卸電気事業、特定電気事業、特定規模電気事業者 ・発電所
・送電線路
・火力発電設備
・風力発電設備
・原子力発電設備

背景に色がついているところが、電気工事法で定義されている一般用電気工作物等の範囲です。
尚、600Vに満たない電圧を使用している事業所で、小出力発電設備(※1)を保有している場合において、一部条件(※2)に該当する場合は
自家用電気工作物には当てはまりません。

※1)太陽光発電設備(50kw未満)、風力発電設備(20kw未満)、内燃力発電設備(発電機などで10kw未満)、燃料電池(10kw未満)
※2)小出力発電設備の電圧が600V以下、各発電設備の出力の合計50kW未満

つまり、小出力発電機の出力合計が50kw以上の場合は自家用電気工作物となります。
また、従量電灯100Vと低圧電力200Vを使用する病院および介護・福祉施設などは、非常用発電機を設置している場合があります。突然の停電による被害を回避・軽減するためです。この非常用発電機の出力が10kWを超える場合は、自家用電気工作物の扱いとなります。
電気工作物の種類には条件が多く混乱しやすいですが、設置や変更に届け出が必要だったり、点検義務があったりするため、関係する電気工作物の管理には注意が必要です。

2| 電気設備の種類6つとそれぞれの役割

ここからは多種にわたる電気設備の種類を一緒に見ていきましょう。私たちが電気設備を使用するときは「動力エネルギー」として使う場合と、電気信号の「通信・制御・情報」として使う場合に分けられます。

具体的な電気設備には、「受変電設備」「配電設備」「動力設備」「照明設備」「通信設備」「発電機設備」と6つの種類に分けられます。

電気を動力エネルギーとして使う場合は、高い消費電力から「強電設備」と呼ばれます。今では「電力系統」と表現することが多くなってきました。

これに対して、電気信号による情報通信として使う場合は、消費電力が少ないため「弱電設備」と呼ばれます。

2-1| 【強電(電気系統)の役割】電気を動力エネルギーとして使っている設備

強電(電力系統)設備は、建物内で電気を使うため電力の生産から消費までの一連のシステム全体の事を指し、発電設備、送電設備、変電設備、配電設備の事を言います。これらを幹線設備ともいいます。さらに「電灯設備」「動力設備」「自家発電設備」「避雷設備」なども強電(電力系統)設備です。

設備種類 詳細・具体例
電灯設備 照明設備の事です。一般的な照明器具や照明スイッチなど
動力設備 電力を機械的エネルギーに変換します。モーターや発電機など
受変電設備 電力会社から供給される電力を受け取り、適切な電圧に変換する設備です。分電盤やブレーカー、トランスやキュービクルなど
幹線設備 電力を建物内の各部に配電するための設備です。電線や配電盤など
自家発電設備 建物内で電力を自己生成する設備です。太陽光発電や風力発電、燃料電池など
避雷設備 雷による直撃や誘導雷で受けた電撃を逃がすための設備です。避雷針や避雷導体など

身近な設備でいうと照明・クーラー(空調)・冷蔵庫に使われる電気にも強電(電力系統)設備が多く、「動力エネルギー」という役割を果たしています。
モーターを使うものは、動力設備と呼ばれます。例えばエレベーターや給排水ポンプなどです。照明設備は、機能を果たすために電気を「光のエネルギー」に変えています。電気ストーブやハロゲンヒーターは、電気を「熱エネルギー」に変え「暖房」という機能・役割を果たしています。その逆に何かを「冷やす」ことにも電気を使っています。クーラーや冷蔵庫は機器内部で、冷媒(熱媒体となるアンモニアやフロン等)を圧縮する為に、コンプレッサーを使ったり、放熱や空気循環のためにファンを使ったりします。モーターによって電気を「運動エネルギー」に変えているのです。

モーターを回す電気設備、発電する電気設備、光を発生させる電気設備の画像

2-2| 【弱電の役割】電気を情報伝達のための信号として使っている設備

弱電設備は、電気を信号として使用するものです。「情報分野」「セキュリティ分野」「音響関連分野」の信号線敷設を行います。

具体的に「情報分野」は電話、インターネットのためのLAN設備、テレビ共聴設備、機器等の監視制御設備など。
「セキュリティ分野」はネットワークカメラ、監視カメラ・電気錠などの機械警備、駐車場および駐輪場管制設備など。
「音響関連分野」では、ホール・体育館・講堂・大会議室・教室などの音響映像設備、放送設備などがあります。

いずれも事業活動や企業運営には欠かす事の出来ない重要な設備であり、安全と密接に関わることが多いので、安全な施工はもとより、保守や点検も重要な仕事の一環になります。

異常発生状態を伝達する電気設備、音声伝達する電気設備、映像データを伝達させる電気設備の画像

以上のように電気エネルギーとしてエネルギーをたくさん使う分野は 「強電(電力系統)」と言い、電気を情報伝達に使うため、それほど電力を使わない分野を「弱電」と言います。

分類や種類がこれほどに存在すると、これら種類・設備・規模によって必要な資格も違います。依頼する電気設備工事会社の得意な分野を理解していることで、スムーズな施工、適切な価格でメンテナンスを行うことができます。

3| 電気設備保守管理

電気設備を安全に効率よく使用するためには、日頃の保守・点検やメンテナンスが欠かせません。電気設備と一口に言ってもその種類や役割には様々あり、負荷のかかる部品や環境、耐用年数等も様々です。

全ての電気設備に共通して言えることは、適切に電流が流れて正常に稼働していることです。この電路に必要以上の電流が流れたら電路を遮断する装置が必要になりますが、この遮断装置も正常に動くかどうかの点検が必要になります。被害を最小限に抑える管理をすることは電気設備の保守管理上、重要な責任となるため、定期的な点検が必要になります。

電気設備保守管理の画像

3-1| 定期点検と保守計画

電気設備の保守管理をうまく運用するためには、定期点検を実施する必要があります。保守には電気設備の清掃や設備周辺の整理整頓など、誰でも対応が可能な内容もありますが、電気の専門業者に依頼しないと点検できない内容もあります。もっとも一般的な点検には、年一回の停電点検というものがあります。この点検では日常点検ではできない電気設備の点検や試験も行います。これを法定点検を言って、法律で義務として定められた点検になります。

一部ですが、具体的に以下のような試験があります。
・絶縁抵抗測定
・トランスの絶縁油の劣化試験
・引き込みケーブルの水トリ―劣化判定
・停電時の非常用発電設備の切替シーケンス試験

専用機器や電気を流す点検作業は、感電などの危険があるため電気工事の資格を持った人しか行うことができませんので、電気業者に依頼をしましょう。上記の試験以外にも電気保安規定に記載のある日常の試験や点検、巡視点検などは、法定点検内で行ってもらうことができます。

電気の保守点検は、主に4つあります。「月次点検」「年次点検」「臨時点検」「事故対応」月次と年次は計画的に行う必要があるため、保守計画を立てておくことをお勧めします。
詳細な点検内容はこちらの記事に載っていますので、ご覧ください。

3-2| 故障対応とトラブルシューティング

定期的に点検をしていても、経年劣化が進んだり、自然災害や人的災害、小動物などによる被害によっていつ設備のトラブルや故障が起きるかわかりません。現状把握や早期復旧に向けてあらかじめトラブルの対処法を把握しておきましょう。

3-2-1| 代表的な電気設備ごとのトラブルと対処法

ここでは、代表的な電気設備のトラブルとその効果的な対処法などをご紹介します。

電気設備 考えられるトラブル 効果的な対処法及び予防法
受変電設備 ●経年劣化
経年劣化による絶縁不良や接触不良によって、ケーブルや開閉器(スイッチ)・過電流や漏電から保護する遮断器が故障し、電気設備機器の保護ができなくなる、もしくは通電不可になる場合があります。
●不適正な電気容量
開閉器や遮断器、電源ケーブルの電気容量選定ミスや容量オーバーの機器接続があると頻繁に遮断されたり、最悪の場合は発火する可能性もあります。
電気工作物は電気事業法により定期的な点検が義務づけられています。
絶縁抵抗試験等、専門の電気業者による定期的な点検を実施してください。
また、新しい電気設備を導入するなどの際は、配電盤に必要な電気容量があるかをよく確認しましょう。
照明器具・コンセント ●正常に作動しない
照明器具やコンセントが老朽化すると、差し込み不良や締結不良、接続部の老朽化によるゆるみが生じ、正常に動作しなくなる可能性があります。●短絡(ショート)
湿気や粉じん等が多い環境で使用する場合、たまった埃が原因となって短絡(決められた電路から外れて近道を流れた大電流。ショート)が発生し火事に至る場合があります。
コンセントなどの接続部にゆるみがないか定期的に点検してください。
もしゆるみを発見した場合は、早急に新しいものへ交換してください。また、接続部に埃や異物が溜まっていないかを目視により点検し、発見した場合は取り除いてください。
コンセントに埃がたまらないようにする工夫の為にコンセントカバーを交換するところまでは資格は不要ですが、コンセントの交換、配線となると電気工事士の資格が必要になりますので、状況に応じて電気業者へご相談ください。
火災報知器 ●機器の故障
火災報知器の誤感知、誤動作は本体の機器故障によるものが多いです。
●誤作動
たばこや料理による水蒸気や煙で誤作動する場合もあります。
定期点検を行ってください。受信機と感知器の双方を試験機を使用して作動確認を行います。法律で無資格の建物オーナーが行ってもいい場合と、専門の有資格者では無ければ行えない場合が定められていますので、確認してください。
設置から10年以上経っている場合は交換しましょう。
機械 ●機械の故障
機械が故障する場合、設備更新時や移設時に、誤操作、誤接続によるものが多いです。
機械を交換することになった場合、基本、配線等の専門的な工事は電気工事士が行いますが、メーカーや型番が違うと機械自体の操作方法が異なる場合があります。
特殊な機械は特に、取扱説明書の確認をしてもらい操作方法の分かる者が立ち会いながら、正確に安全に操作してもらえる環境を用意してください。
コード・ケーブルなど ●漏電や感電
設備の老朽化によりケーブル損傷、接点の接触不良や異物付着により発生し地絡(大地への漏電)することがあります。
●小動物による被害
ネズミによる咬害で断線してしまうこともあります。
漏電遮断器(漏電ブレーカー)は必ず設置してください。1995年に漏電遮断器の保護機能が義務化されています。1995年以前の分電盤は漏電遮断器が付いていない可能性もあるため交換してください。また電気機器の点検・整備をこまめに行ってください。遮断機が付いていても老朽化が進んでいる機器は交換しましょう。小動物による被害は、防鼠に特化したケーブルがありますので、交換することで被害が抑えられます。

3-2-2| 予期せぬ停電が発生した時は

いつ起こるかわからない停電ですが、発生した際は落ち着いて以下の点を確認し安全確保と状況の把握を行います。

・人身災害、火災、爆発等はなく、周囲の安全が確保できているか
・非常用発電機が正常に稼働し一時的に停電が復旧しているか
・非常用発電機の燃料等から発電継続時間の見込みはどのくらいか
・停電を回復できる見込みがあるか
・停電は建物内(構内側の問題)だけか、地域全体(電力会社側の問題)か

予期せぬ停電が発生した時はの画像

停電の原因が自身の構内側の問題と考えられる場合は、次を確認して事故範囲や原因を特定します。
・電気設備の作業を行っていたかどうかと作業者や周辺の安全確認
・どこの保護継電器が動作し、どの遮断器が遮断しているのかの確認
※保護継電器:電力系統に発生する異常な電圧、電流、周波数などを検出することで電気設備を故障などから保護し、影響を一定の範囲に抑えるために使用する

これらの事故範囲や原因は、普段からの点検やメンテナンスにより、仕組みの理解を深めてこそ的確に判断できるようになります。
原因の特定などは決して簡単にできるものではありませんので、点検やメンテナンスは定期的に行い、電気の専門業者にいつでも相談できるような環境を構築しましょう。

大規模停電時の対策は、こちらの記事で詳しく紹介しています。地域全体が停電している際は、安心感を与えられる存在が必要です。
電気設備の管理者の立場としてご覧になっていらっしゃる方は、こちらの記事もぜひご覧ください。

4| 電気設備の安全対策

電気設備には便利である反面、安全に使用しなければ感電や漏電、最悪の場合火災を引き起こす危険性もはらんでいます。このため、電気安全装置が必要不可欠です。

電気設備の安全対策の画像

4-1| 適切な保護装置の設置

一般的な電気安全装置6種を紹介します。

ここでは、代表的な電気設備のトラブルとその効果的な対処法などをご紹介します。

電気安全装置 詳細
過電流保護装置
(ブレーカー)
過電流保護装置は、回路内の電流が許容値を超えた場合に自動的に回路を遮断する装置です。これにより、過熱や火災を防ぎます。ブレーカーは一般家庭の電気パネルに必ず設置されている基本的な安全装置で、手動でリセットが可能です。
アースリーク遮断機
(GFCI)
アースリーク遮断器(Ground Fault Circuit Interrupter)は、特に水周りでの感電事故を防ぐために設計されています。電流の流れにわずかな不均衡が生じた場合、即座に回路を遮断し、感電のリスクを最小限に抑えます。
アークフォールト遮断機
(AFCI)
アークフォールト遮断器(Arc Fault Circuit Interrupter)は、回路内でのアーク(放電現象)を検知し、火災を引き起こす可能性のある電気アークを未然に防ぐための装置です。近年、新築住宅の電気回路にはAFCIが必ず取り付けられるようになっています。
電圧レギュレータ 電圧レギュレータは、入力電圧の変動を抑え、機器に安定した電圧を供給するための装置です。これにより、電圧の変動による電子機器の故障を防ぎます。
機械が故障する場合、設備更新時や移設時に、誤操作、誤接続によるものが多いです。
避雷器 避雷器は、落雷による直接的な打撃から建物や電気設備を守るための装置です。高い建物や電気設備が密集している地域には特に重要です。
漏電遮断器
/漏電ブレーカー
(ELCB)
漏電遮断器(Earth Leakage Circuit Breaker)は、過電流保護装置やGFCIと同様に回路を遮断する機能を持ちますが、その感知するのは地球への電流の漏れ(漏電)です。この装置により、漏電による感電や火災を防ぐことができます。

これらの電気安全装置は、火災や機器の損傷を未然に防ぎます。法規制により設置が義務付けられている場合が多いため、遵守できるように確認・対応をしましょう。これらの電気安全装置を選定する際には、設置環境や保護対象となる機器の種類に応じて適切なものを選ぶことが重要です。よくわからない場合は、電気工事の専門家へ相談することをお勧めします。安全性を高めるため、導入後は、定期的な点検とメンテナンスを実施し、最適な状態を維持することが、社会的責任となります。

4-2| 電気事故の予防と安全管理

電気工事で起きやすい事故には「感電事故」「転落事故」があります。これらは電気工事の現場で、電気を扱うプロである電気工事士が特に気を付けるように言われていることです。店舗やオフィスにおいて点検やメンテナンスを電気工事業者に依頼した際には、安全に作業ができるように環境を整理整頓して作業に当たってもらうことも安全管理のポイントとなります。作業場所に邪魔になる荷物がないか、脚立を置くスペースを十分に取れるか、作業時間や場所等、計画を把握して、電気工事の作業の近くに近寄らないように関係者にアナウンスをするなど、電気メンテナンスを安全にスムーズに行うための施策は、直接作業にかかわらなくても行うことが可能です。

5| 電気設備の省エネ対策

私たちが快適に過ごすうえでエネルギーはなくてはならないものですが、主なエネルギー源である石油や石炭、天然ガスなどは限りがあります。この資源を大切にして効率的にエネルギーを使うことを省エネ(省エネルギー)といいます。電気設備を稼働するためにはエネルギーが必ず必要になりますが、使い方を工夫したり、省エネに特化した電気設備を積極的に導入したりすることで環境負荷が軽減され、私たちにも節約となって返ってきます。

電気設備の省エネ対策の画像

5-1| 省エネ設備を選定するポイント

電気設備で省エネルギーの設備を選ぶ場合は、以下のようなポイントを評価の指標としてみてください。

・これまで捨てていたエネルギーを電源に戻し、再度エネルギーとして活用しているか(電源回生エネルギー)
・待機電力に省エネ機能が搭載されている
・モータのエネルギー効率を最大化する機能が搭載されているか(例:インバータ)
・設備の小型化・軽量化などによって省資源、省スペース化、省エネに貢献できている
・設備を構成する材料のリサイクル性が向上している
・設備の稼働速度、操作ステップ減少などにより、生産性が向上している
・設備が少ない材料、部品等で構成されるなど省資源化に貢献している(バッテリーレス、部品点数削減など)
・設備のメンテナンス性が良い

5-2| 省エネ設備の導入における留意点

省エネ設備の導入にを進める際に、下記に挙げる4点を留意しておくと省エネ対策を効果的に行えます。
1)現在使っているエネルギーについて正確に把握する
どのようなエネルギーをどこで使っていて、どれくらいの使用量かを把握しましょう。月別に、最低でも1年間の使用量のデータがあることが望ましいです。
2)省エネ設備を取り入れると最も効果を発揮しそうな設備を導入する

省エネ設備はどんどん新しく開発されています。それらの導入を促進するために補助金や減税などの措置が講じられているため、稼働率の高い設備は、積極的に省エネ性能のあるものに切り替えたいものです。費用対効果を出すためにも、1)で説明したこれまでのデータがあると検証しやすくなります。

3)すぐに取り組めること、人為的にできることはさっそく取り組む
例えば、省エネ設備を導入するときは費用が掛かるため時間がかかります。そんなときでもゾーン別に照明スイッチのONとOFF切り替える。お昼休みに使わない電気設備は電源を切る。窓から取り入れる日差しをブラインドなどで調整することで極端な空調の設定を避けるなどの工夫でコスト節減につながります。
4)省エネの設備を導入して放置をしない
省エネ設備を導入したからといって、継続して保守管理を実施していかなければ、耐用年数よりも前に故障やトラブルを起こしかねません。保守管理が組織内の運用で難しいと感じる場合は、電気工事業者に依頼して、定期的に点検ができる環境を作ることが重要です。

6| 電気設備の最新技術

最新技術が進み、電気設備も一般的に身近になってきました。代表的なものが太陽光発電設備と電気自動車(EV)です。これらの環境への影響や電気効率の有用性を認め、政府でも補助金が出るなど導入を推進する動きがある電気設備です。

6-1| 太陽光発電と関連する電気設備

太陽光発電は、太陽光エネルギーを太陽光パネルに集めて直接電気を作る発電方式です。燃料が不要でCO2を排出しないため、環境にやさしい再生可能エネルギーとして注目されています。

太陽光発電と関連する電気設備の画像

6-1-1| 太陽光発電とパワーコンディショナー

太陽光発電は、発電設備の中でも一般家庭に設置できるほど身近になっている、導入しやすい電気設備です。太陽光発電で発電した電気を使うためには、パワーコンディショナーが必要になります。太陽光パネルで発電した電気は直流電気です。私たちが普段使っている電気は交流電気のため、直流を交流に変換しなければなりませんが、パワーコンディショナーがその変換作業を行っています。またパワコンは、変換だけでなく日照時間や天候によって左右される発電量を、安定して供給できるように調整しています。

6-1-2| 太陽光発電と蓄電池

パワーコンディショナーと混乱しやすいのが蓄電池です。蓄電池は、日中に太陽光発電した電力を貯めておくことができる電気設備です。そのため貯めた電気を夜間に使用することが可能になります。さらにこの仕組みを利用して、災害時の停電被害にも備えることができます。

近年に見る電気代の高騰や災害の増加によって、太陽光発電の導入を検討している傾向が強いですが、これらの太陽光設備、パワーコンディショナー、蓄電池はいずれも耐用年数があります。また、設置環境や利用方法によっても年数は短くなる可能性があるため、定期的に点検・メンテナンス、耐用年数の過ぎたものは新しいものと交換を行う必要があることは忘れてはなりません。

6-2| 電気自動車(EV)と充電インフラ

電気自動車(EV)と充電インフラの画像

電気自動車(EV)とは、電気で動く自動車のことを言います。脱炭素、カーボンニュートラルが注目されている時代にCO2が排出されない電気自動車(EV)を普及させようと、より一般的な電気設備となっているものの一つです。ガソリンを燃料にしていた自動車は、CO2を排出します。環境負荷が大きいため、現在は2030年までにガソリン車の新車は販売禁止となることが政府により決定されました。これらの状況から、2030年に向けて電気自動車(EV)へのシフトが大幅に進む予測はほぼ疑いないとされています。

6-2-1| 電気自動車(EV)のメリット

電気自動車(EV)は電気エネルギーを効率的に使うことができるため、経済性に優れています。国の政策であることもあり、様々な優遇策がとられていてお得に購入できたり、税金の減免があります。車検などのメンテナンス費用も抑えることができるため、とても魅力的なのです。

ところが、日本の電気自動車(EV)普及率は、世界と比較すると伸び悩んでいるのが現状です。電気自動車が動くためには電気が必要になりますが、ガソリンスタンドのように電気を充電するスタンド(EV充電器)の普及も同時に必要になります。この充電インフラが整っていないと電気自動車(EV)を購入したオーナーが充電したくてもできない状態となります。

電気自動車(EV)は環境にやさしく経済性も高く、さらにバッテリーに蓄積された電気を使って蓄電池としても活躍することができるため、確実に将来なくてはならない重要な電気設備となると言えます。

6-2-2| 電気自動車(EV)の導入に関連する電気設備

導入計画は様々なケースが挙げられますが、例えば社用車として会社に電気自動車(EV)の導入を検討する場合、EV充電設備の設置工事もしくはコンセントの増設が必要になります。

また、その社用車として迎えた電気自動車(EV)は、災害時の蓄電池利用をBCP対策の一つとして施策することができます。

さらに太陽光設備と組み合わせることで、普段の電気代節約にもつながったり、災害時に効果を発揮し地域のよりどころとなったりすることが考えられます。計画的に最新技術の導入を検討することは環境汚染の低減はじめ社会貢献にもお勧めと言えます。

7| 電気設備の工事と技術基準及び管理について

突然の故障によるトラブルが発生すると、売り上げは下がるのにメンテナンス費用が掛かるなど悲鳴を上げたくなりますよね。だからと言って、電気設備工事は、専門的な知識と資格がないとできないものがほとんどなので、自分たちで解決することはお勧めしません。トラブルが起きた際、建物設備・店舗の管理者がするべき対応は、メンテナンス会社への早急な依頼、正しい状況報告、日ごろからの点検管理です。老朽化などの場合は、大規模な改修が必要になる場合があります。

7-1| 電気設備の工事現場は多岐にわたる

電気工事のメンテナンス作業現場は広範で、工場・プラント・オフィス・ビル・マンション・公共施設等、多岐にわたります。電気設備工事を行えるのは電気工事会社です。蛍光管の交換などは資格がなくてもできる作業ですが、高所の照明の取り付け・電球交換作業やコンセントの増設、配線工事などは、感電や漏電の危険性もあるため正しい知識を持つ必要があります。そのため電気工事の内容や作業内容によって、電気工事士法の定めにより「電気工事士資格」が必要で、労働安全衛生法に係る特別教育を要する場合もあります。

また、電気設備不調の対応にとどまらず、既存の建物へ電気設備の更新・追加をする改修工事も行います。建物全体にかかる運営費用の削減や商品のバリューアップのための設計を提案し、施工することもあります。

7-2| 電気工事するなら押さえておきたい、電気設備技術基準

ここまで、電気設備について色々とお話しして来ました。具体的にイメージすることができましたでしょうか。
今から電気設備技術基準についても触れていきます。電気工事士はこの基準に基づいて電気設備工事をするように定められている要となる基準です。

電気設備には様々な分類と種類があり、工事は安全かつ適切に電気工作物を施工・工事することが求められています。そのため、経済産業省管轄のもと技術基準が定められています。電気設備の技術基準というのは電気事業法に基づいて制定された電気設備工事に関する基準のことです。

詳細については、以下を参照して見てください。
電気設備の技術基準の解釈(PDF)

上記規制事項を簡単にまとめると、以下のようになります。

1)電気工作物が人に傷害などの危険を及ばさないようにすること
2)電気工作物が他の電気設備に磁気的な障害を及ぼさないようにすること
3)電気供給に障害を及ぼさないようにすること

電気設備技術基準というのは、社会情勢に伴って何度も改正され続けていますので、改正の際には電気設備工事に関わる電気工事士などの関係者は、技術基準を適合させるように維持していかなければなりません。そのため電気設備に関するメンテナンスは、DIYでできるだろうと安易に考えずに電気の専門業者に相談することをお勧めします。

7-3| 電気設備を管理することの重要性

電気設備管理の内容は、電気設備の保守と点検、整備や修理、運転監視などです。管理を徹底しないと、漏電による発火へと繋がるリスクが高まります。また、トラブルやアクシデントにより電気の供給がストップした場合には、建物施設・店舗環境の機能が低下するため、電気設備不具合による私たちに与える影響は大きいといえます。

設備管理業務としては、電気設備を正常な状態で使用するため、法に定められた事項を基に各種点検等を行わなければなりません。保安規程に定められた年次点検や月次点検など、電気設備の点検を行い、設備に異常がないか確認することが挙げられます。具体的には、受電設備や電気設備において数値の記録、電流・電圧の計測を行う日常点検や、非常用発電設備点検、絶縁抵抗の調査、ねじのゆるみや火災を未然に防ぐための放射温度計の使用といった年1回の定期点検があります。

なお、各種点検等は規定上3年間の保存が義務付けられています。
電気工事士に依頼する場合は、使っている設備や付随する電気器具などのメンテナンスデータをよく理解しているところにお願いすると安心でしょう。

7-4| 電気設備は多くの技術者で成り立つ

メンテナンスから増設・更新の改修まで、課題解決に最適な電気工事会社を選ぶことで建物設備を安全で快適に運営していくことができます。

上述した、強電・弱電の種類の量をみてもわかるように、電気設備の工事・取扱には、様々な電気設備があることがお分かりになったと思います。また、それぞれの電気設備の取り扱い、工事、維持管理には、電気工事士資格や電気主任技術者などの資格を持っていないと対応できない工事もあります。建物の大きさや工事の規模によっては、現場監督者の資格を持った人物が必要な場合もあります。

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トータルソリューションの建物設備メンテナンスフローの画像

※弊社の建物設備メンテナンスフロー

8| まとめ

今回は、電気設備を体系的に説明してきました。電気設備の基礎知識や重要性が理解できましたでしょうか。

電気設備の保守管理は設備が正常に稼働することを守るだけではありませんでした。トラブルや災害が起きた際の復旧を想定した保守計画や定期的な点検・試験により、最小限の被害と早期復旧ができるように管理することが重要です。

電気工事は、専門の資格を持った電気工事業者しか行うことができませんが、少しでも電気設備を取り巻く環境を理解していることで、専門的なアドバイスを受けることができたり、自分たちが叶えたいことを具体的に電気工事業者へ伝えることができたりします。

また、社内への提案もより説得力のあるプレゼンができるようになります。例えば省エネ性能の高い電気設備について意見を求められたときに説明できるでしょう。これらの知見を活用して、安全で効率的な電気設備の管理をしていきましょう。

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トラブル内容を承るオペレーターも電気工事士有資格者のため、安心してご相談ください。電話口の解決でコスト削減も可能
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