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公開日:2023年7月29日

電力の早期供給がカギ!災害に強いビジネスを築くBCPの作成方法

自然災害が頻発する日本では、これまで大手企業を中心にBCP(事業継続計画)の重要性が認識されてきました。最近では新型コロナウイルスの影響により、中小企業でもその重要性が認識され始めています。

BCPを策定する際は、ただ計画を考えるだけでは不十分です。緊急事態に備えたマニュアルの策定や事前の訓練、マニュアルの見直しといったステップが求められます。この記事では、BCPの全体像や策定の流れ・方法・注意すべきポイントなどについて、分かりやすく解説します。

1| BCP(事業継続計画)とは

はじめに、BCP(事業継続計画)の意味や似ている用語との違いを解説します。

BCP(事業継続計画)とは、でんきの窓口の画像

1-1| BCPとは

BCP(Business Continuity Plan)とは、事業継続計画のことです。企業が突然の自然災害や大規模な火災などの非常事態に直面したときに、ダメージを最低限に抑えながら、主要な業務を続け、可能な限り早く事業を正常に戻すための具体的な計画を指します。

BCPの特徴は、従来の防災計画の考え方を取り入れつつ、非常事態が発生した後の事業継続のための具体的な対策を準備しておくことに重きを置いている点です。つまりBCPは、企業の経済的価値だけでなく、社会的価値を高めるための活動でもあると言えます。

1-2| 似ている用語(BCP、BCM、DCP、防災)

続いて、BCPと似ている用語との違いを解説します。それぞれの意味を把握し、混同しないようにしましょう。

1-2-1| BCPとBCMの違い

BCPとBCMの違いを簡潔にまとめると、以下のとおりです。

BCP(事業継続計画)
  • 事業の継続に向けた具体的な対策計画
BCM(事業継続マネジメント)
  • 事業継続に関する総合的な運用管理
  • 事業の継続に向けたマネジメント全般に関する運用管理
  • BCPを実行するための管理体制

BCPは計画であるのに対して、BCMはそれを実行するための管理体制であることがわかります。

BCMは、企業が潜在的なリスクを認識し、それらのリスクに対処する戦略を立てる活動を指します。これによってステークホルダーの利益、企業の評判、ブランド、価値を守ることができます。

緊急時に備えるにはBCPの策定だけでなく、BCPによって事業継続を実現可能なものとするための継続的な改善を追求する管理体制(BCM)を確立することが大切です。

1-2-2| BCPとDCPの違い

BCPとDCPの違いは、以下のとおりです。

BCP(事業継続計画)
  • 事業の継続に向けた具体的な対策計画
DCP(地域継続計画)
  • 特定の地域内にある企業同士が連携して継続を目指すための計画

DCPは企業個々の事業継続を目指すBCPとは異なり、特定の地域全体が災害時にも機能し続けるための計画を指します。

例えば、企業が再生可能エネルギーの導入によって、災害時に電源を確保し、その電源を地域の人々と共有することにより、地域社会への貢献につながります。また、自治体と地元企業が協力してDCPを作ることで、地域全体が災害に対して強靭なシステムを持つことが可能です。

1-2-3| BCPと防災の違い

BCPと防災は、以下のとおり目的に違いが見られます。

BCP(事業継続計画)
  • 事業の継続に向けた具体的な対策計画
  • 災害発生時の事業継続・復旧が目的
防災
  • 災害の被害を予防したり、被害の拡大を防止し、災害からの復旧を図る活動
  • 災害を未然に防ぐことが目的

BCPは、システムの障害・部品供給の遅延・資金調達の困難など、事業運営に影響を与える可能性のあるさまざまな問題を考慮します。そして、これらの問題が起こったときに、どのように事業を続けるかを計画するのです。

これに対して防災では、防災用品の準備や建物の耐震化など、災害に直接対応するための準備に重点が置かれます。

2| BCPの目的とは

本章では、BCP対策の必要性や業種別のBCPの目的について解説します。

BCPの目的とは、でんきの窓口の画像

2-1| BCP対策が必要な理由

現代の日本において、BCP対策は業種を問わず必要性が高まっています。BCP対策が必要とされる理由の中でも、すべての企業に共通する内容は以下のとおりです。

理由 解説
命と会社資産の保護 自然災害・テロ・システムトラブル・情報漏洩・病気の流行などの予期しない緊急事態が発生したとき、従業員の生命を保護し、企業の損失を最小限に抑える必要がある。
企業の信用向上 緊急事態が起こったときにすばやく事業を復旧することで、企業の信用力を向上させられる。
安定した資材の供給 地震などで工場・運送路が損壊した場合、自社だけでなく取引先にも影響が出るため、事故が起こっても安定した供給ができるよう準備する必要がある。
社会貢献 食品会社であれば食料の提供、ホテルならば帰宅できない人の受け入れといった災害時の活動は、企業の社会的責任(CSR)として評価され、顧客や投資家に良い印象を与えられる。

2-2| 業種別のBCPの目的と対策

続いて、業種別に重視されるBCPの目的と対策をまとめました。

業種 BCPの目的と対策
介護
  • 2021年4月に導入された新しい介護報酬制度により、介護業界におけるBCPの策定が必須とされた(猶予は2024年まで)
  • 感染症が流行したり自然災害が起きたりした場合でも、介護サービスを途絶えないようにすることが求められている。(介護サービスが提供できないと、その利用者の生活や健康に深刻な影響が及ぶ可能性があるため)
病院
  • 病院が策定すべきBCPの主な目標は、いかなる状況下でも医療サービスが提供できるようにすること。一瞬でも停電が許されない手術室などの機能維持が必要です。
  • 主なBCP対策として、医療機器の電力供給の確保・医療スタッフの人員配置・災害で被害を受けた患者の受け入れといった項目が考慮されている。
中小企業(全般)
  • 減災投資促進税制や事業継続力強化計画認定制度といった税制の優遇措置や金融上の支援が提供されている
  • 日本では中小企業が企業全体の99%以上を占めており、事業が中断してしまった場合、地域経済に大きな打撃を与えるため
  • 一部の自治体では、専門家であるBCPアドバイザーによる、事業継続計画策定の支援を受けることも可能
製造業
  • 製造業で重要視されるBCPの要点は、工場設備の保護・予備工場の準備・原材料の供給維持
  • たとえ工場そのものが直接災害に見舞われなかったとしても、内部の設備が損傷すれば、事業の続行が難しくなることがある
  • 生産拠点や取引先を複数の場所に分散させることで、必要な工場や原材料の供給元・製品の配送先などの確保が可能となる

3| 自然災害をはじめとする企業が直面しうる具体的なリスクとは

企業が遭遇する可能性のある、災害を含むリスクは以下のように多種多様です。

  • 自然災害
  • 感染症の蔓延
  • テロ攻撃
  • 火災
  • 有害物質の漏洩
  • 商品のリコール
  • システムのダウン
  • セキュリティの侵害
  • 法律違反
  • 病気・怪我による社員や経営陣の離脱

このようなリスクに十分に対応するためには、BCPを策定しリスクマネジメントを講じておく必要があります。

自然災害をはじめとする企業が直面しうる具体的なリスクとは

4| BCPのメリット

BCPを策定するメリットとして代表的なものを下表にまとめました。

メリット 補足
事業被害を最小限に抑える
  • 自然災害やテロなどの緊急事態が発生した際、事業が停止してしまうと、その期間は損失が膨らむだけでなく、顧客が競合企業に移行するリスクも高まる
  • 事前にBCPを整備しておけば、これらのリスクを減らし、事業被害を最小限に抑えられる
企業の信頼性と評価を向上させる
  • 緊急事態への対策を入念に計画している企業は、取引先や投資家からの信頼を獲得しやすくなる
  • 迅速かつ効果的に対応できれば、市場での競争力を高め、企業のイメージを向上させられる
顧客の流出を防ぐ
  • 緊急事態が起きて事業の復旧に時間がかかると、顧客が他社に流れるリスクが高まる
  • BCPを作成しておけば、事業を迅速に再開でき、顧客が他社に移行するリスクを抑えつつ市場シェアを維持できる

BCPのメリットの画像

5| BCPの策定方法

BCPの策定方法には、大まかに「外部依頼」と「自社で作成」という2種類の選択肢があります。

策定方法 特徴
外部依頼
  • BCPコンサルタントや行政書士に依頼する
  • かかる費用はBCPコンサルタントの場合は100万円~200万円、行政書士の場合は30万円~40万円程度が相場
  • BCPコンサルタントは、行政書士に比べてシステム面に詳しい傾向があり、最適なBCP対策を策定しやすい
自社で策定
  • 中小企業庁より公表されている「中小企業BCP策定運用指針」をもとに進めていくのが基本
  • 外部依頼と比べて費用を抑えられる分、最適なBCP対策が難しく、策定に大きな手間がかかりやすい

BCPの策定方法の画像

BCPの策定方法を選ぶ際は、まず「中小企業BCP策定運用指針」を読み情報収集をした上で、自社にとって適切な選択肢を検討するとスムーズに進められます。

参考:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」

6| BCPの策定ステップ

BCPの策定ステップを考える際は、「BCP発動後のフェーズの把握」と、「策定の具体的な流れ」を把握しておくことが大切です。それぞれ具体的な内容を順番に解説します。

BCP策定のステップの画像

6-1| BCP発動後のフェーズ4段階を把握する

BCP発動後のフェーズは、以下の4つに分かれます。BCP策定では、それぞれに則した対策が求められます。

1.BCP発動フェーズ
  • BCP発動フェーズは、災害や事故が起きたときから始まり、初期の対応を経て、正式にBCPが始動するフェーズです。この段階ではすばやく混乱を収束させ、状況を把握します。
2.業務再開フェーズ
  • BCPが発動した後、代替品などを手に入れ、重要な商品・サービスの提供を再開し、それらを管理することが求められます。
3.業務回復フェーズ
  • 重要な商品の提供を続けながら、業務範囲を段階的に広げていきます。ここで、一部の業務だけでなく、多くの業務を再開します。
4.全面復旧フェーズ
  • 通常通りの業務活動が完全に再開します。

各フェーズでは、状況の把握と情報の更新を怠らないようにしましょう。想定していた状況と異なる場合もあるので、その都度、現場の状況を考慮し、慎重に判断を行うことが大切です。

6-2| BCP策定のための流れ

BCPを策定するための具体的な手順は次のようになります。

  1. 1. 自社が直面する可能性のある大規模な自然災害などを特定する
  2. 2. 自社の生存に直結する重要な業務をリストアップする
  3. 3. 主要な業務を復活させるための目標時間を設定する
  4. 4. 復旧に時間がかかる資源を特定する
  5. 5. 事業継続のための資金調達の方法を考える
  6. 6. それぞれの問題に対する対策や代替手段を考える
  7. 7. 従業員や取引先と共有して共通の認識を持つ
  8. 8. 緊急時の社員の安否確認や取引先との連絡方法を準備する
  9. 9. 今後何をどのように実施するのか検討し、計画的に進めていく
  10. 10. 1年間の活動を振り返り、BCPを見直す

大きな災害やトラブルに対処するためには、これらの手順に基づいてBCPを事前に作成し、それをもとに分かりやすいマニュアルを作成すると良いでしょう。さらに、全社で訓練を行い、その結果をもとにBCPを改善することも重要です。

7| BCPの策定項目

本章では、BCPの策定で検討すべき項目について具体的に解説します。

7-1| 代表的な策定項目

BCPの代表的な策定項目は、以下の5つです。

  • 人的資源
  • 物的資源
  • 資金
  • 情報
  • 体制

いずれも非常に大切ですが、早期に事業を再開・継続するためには、水・ガス・電気といったインフラの復旧が必要不可欠です。インフラの復旧には多くの時間を要することが分かっているため、早期復旧のための準備が欠かせません。

7-2| 電気設備はインフラ早期復旧のために最重要

大地震や洪水、雷などの災害が発生した際に電気設備が停止すると、事業の継続は非常に困難となります。企業活動に大きなダメージを与えるだけでなく、社員が怪我をする可能性がある上、建物や設備にも損害が生じます。影響は顧客にも及び、長期間にわたりサービスが提供できない状況に陥る可能性もあるでしょう。

したがって、電気設備は、インフラ早期復旧のための最重要項目と言えます。電気設備のBCPとしては、下記6つの観点から対策を講じることが重要です。

  • 地震
  • 水害
  • 風害
  • 停電
  • 雷害
  • 通信障害

電源設備のBCP対策の一例としては、受電回線の複数化によるライフライン強化が挙げられます。「電力の多回線化」や「引込の異ルート化」をすることで、突然のトラブルでも安定した電力の供給を保持し、商用電源の受電の信頼性を高められます。

また、予備電源を準備することもおすすめします。発電機や蓄電池による電源のバックアップ対策をすることで、非常時にも設備を有効活用できます。非常用の設備については定期的に点検を行い、いつでも正常に発動できるように備えましょう。

さらに、ビル施設自体も受変電設備、幹線ルート、電灯盤や動力盤を含む電源経路の二重化を実施するような対策を検討することが基本となります。

対象設備の重要度や方法・規模により、費用負担が変わってくることがありますので、自社にとって効果的な電気設備のBCP対策を知りたい場合は、電気設備のプロに相談することが大切です。

電気設備はインフラ早期復旧のために最重要の画像

8| 災害が発生した場合の実際の流れを確認しよう

災害が発生したら、策定したBCPをもとに以下の手順で対応します。

被害状況の確認
  • 従業員の安否確認を実施する
  • 建物・設備・システムなどの被害状況をチェックする
非常時の運用体制への切り替え
  • 不足人員を補いつつ、非常時の運用体制を構築する
  • 被害に遭った箇所は代替の設備・システムに切り替える
復旧作業の実施
  • 建物・設備などの復旧作業を実施する

災害が発生した場合の実際の流れを確認しようの画像

9| BCPをうまく運用するためのポイント

BCPは一度策定して終わりではなく、確認・改善を繰り返しながら運用し、対策の拡充を図ることが大切です。下表に、BCPをうまく運用するための代表的なポイントについて、BCP対策で特に重要な電源確保のための施策と併せてまとめました。

BCPをうまく運用するためのポイント

ポイント 補足
重要な中核事業に絞る
  • 非常時に活用できる経営資源は限られるため、最優先で取り組むべき重要事業を明確にしておく
  • 災害時における電源確保の方法を検討し、中核事業に割り振る
従業員に具体的な計画・指示内容を共有する
  • 事前に具体的な行動を指示しておくことで、トラブル発生時でも従業員が冷静に行動できる
  • 非常用発電機や蓄電池の導入を計画し、設置場所を決めておく
定期的に見直し・更新する
  • 社内の状況に応じていないBCPは意味をなさないため、常に最新の状態を保っておく
  • 非常用発電機や蓄電池の保安点検を定期的に実施する
研修・避難訓練を実施する
  • 事前の実施により、非常事態でも適切に行動できるようになる
  • 研修・避難訓練時に非常用発電機や蓄電池などの稼働テストを実施する

10| まとめ

BCPとは、企業が自然災害や大規模火災などの突発的な非常事態に遭遇した際に、被害を最小限に抑えつつ主要な業務を継続し、事業を可能な限り迅速に正常状態に戻すための具体的な計画のことです。

BCPの代表的な策定項目には、「人的資源」「物的資源」「資金」「情報」「体制」が挙げられますが、早期に事業を再開・継続するためには、電気等のインフラの復旧が欠かせません。

BCPを効果的に運用するためには、非常事態時の電源確保策を事前に検討し、それを従業員と共有するとともに、定期的な見直しと訓練を行うことが重要です。電気設備に関するBCPについて詳しく知りたい場合は、専門家に相談することをおすすめします。

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