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キュービクルの変圧器が2026年から新基準に!影響や企業がすべき対応

公開日:2025年11月29日

キュービクルの変圧器が2026年から新基準に!影響や企業がすべき対応

2026年4月から、変圧器(トランス)の省エネ性能に関する新基準が適用されることをご存知でしょうか?変圧器が新基準となることで懸念されているのが、キュービクルへの影響です。

キュービクルは、電力会社から供給される高圧電力(6,600V)を受電し、建物内で使用できる電圧(100V・200V)に変換し、配電するための電気設備一式で、さまざまな電気機器からなります。中でも、「キュービクルの心臓部」ともいわれるほど重要な電気機器が、変圧器です。変圧器は、6,600Vの高圧電力を100V・200Vに変圧する役割を担っています。

今回は、変圧器の新基準の概要やキュービクルを使用している企業への影響、新基準適用を見据えて企業がすべき対応などを解説します。変圧器やキュービクルの買い替え・新規購入を検討している企業にとって有益な情報をご紹介していますので、ぜひご一読ください。

1| 変圧器の新基準とは?概要や対象、背景

変圧器の新基準とは?概要や対象、背景

変圧器の新基準とは、省エネ性能に関する新たな基準のことです。

新基準の概要や対象、基準改定の背景をご紹介します。

1-1| 2026年4月から、変圧器のトップランナー基準が変わる

2026年4月から、変圧器の「トップランナー基準」が変更になります。トップランナー基準とは、省エネ法の「トップランナー制度」で定められた基準です。

  • トップランナー制度:電気機器の省エネ基準(省エネ性能に関する基準)を、現在商品化されている製品の中で最も優れている機器の性能以上にする制度
  • トップランナー基準:トップランナー制度で定められた省エネ基準


トップランナー基準を満たすものしか、製造・販売が認められません(ただし、使用に関する規制はありません)。2026年4月以降に販売・購入できる変圧器は、新基準を満たすものに限られます。

1-1-1|トップランナー基準の変遷

これまで、変圧器のトップランナー基準は、「第一次判断基準」と「第二次判断基準」がありました。

  • 第一次判断基準:油入変圧器は2006年度を、モールド変圧器は2007年度を目標年度とするもの
  • 第二次判断基準:油入変圧器、モールド変圧器ともに2014年度を目標年度とするもの


2025年現在は第二次判断基準が適用中のため、工場やビルなどで使用されている変圧器の大半は「第二次判断基準」を満たすものです。

省エネのさらなる推進のため、経済産業省は2023年10月に「第三次判断基準(油入変圧器、モールド変圧器ともに2026年度を目標年度とするもの)」を公示しました。そこで示された新基準が、2026年4月から適用されます。新基準の適用により、基準年度(2019年度)の実績値に対して、平均エネルギー消費効率が約11.4%向上すると見込まれています。

参考:経済産業省「事業用変圧器の新たな省エネ基準を策定しました

変圧器のエネルギー消費効率の推移は、下のグラフの通りです。
《変圧器のエネルギー消費効率の推移》
変圧器のエネルギー消費効率の状況

参考:経済産業省「変圧器判断基準ワーキンググループ取りまとめ(概要パワーポイント)

1-2| 新基準の対象となる変圧器

新基準の対象となるのは、「定格一次電圧が600Vを超え7,000V以下」かつ「交流回路に使用される」変圧器です。具体的な適用範囲は、現在適用されている「第二次判断基準」と変わりません。

新基準の適用範囲は、以下の通りです。

適用範囲
機種 油入変圧器、モールド変圧器
容量 単相:10~500kVA
三相:20~2,000kVA
電圧 高圧:6kV、3kV
低圧:100~600V

一般的な工場・ビルのキュービクルに搭載されている変圧器のほぼ全てが、新基準の対象です。

一方、「ガス絶縁変圧器」「H種絶縁の乾式変圧器」「スコット結線変圧器」「水冷・風冷式の変圧器」などは対象外となっています。いずれも特殊用途で用いられるものであり、一般的な工場・ビルではほぼ使われていません。

1-3| 基準が改定される背景

基準改定の背景にあるのが、地球温暖化です。地球温暖化の主な要因は温室効果ガスであることから、世界全体で脱炭素化が推進されており、日本政府は「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指しています。これを受け、温室効果ガス排出削減のため、温室効果ガス排出量が多い電気機器の省エネ基準が強化されることになりました。

変圧器は、その性質上、温室効果ガス排出量が多い電気機器です。また、基本的に24時間365日稼働するため、省エネ性能の少しの差が年間の温室効果ガス排出量を大きく左右します。

こうした理由から、変圧器のトップランナー基準が改定されることになりました。

2| 新基準の変圧器の特徴

新基準の変圧器の特徴

新基準の変圧器には、以下の特徴があります。

特徴 補足説明
省エネ効果が向上する 稼働中に発生するエネルギー損失を抑えられ、電気代の削減につながる
価格が高くなる 現行モデルの1.5倍~2倍の価格になる見込み
サイズが大きくなる・重量が増える 現行モデルよりも、サイズ・重量がUPする

省エネ効果の向上は、大きなメリットです。一方で、価格上昇やサイズ・重量UPはデメリットといえます。

3| 新基準が適用されるとどうなる?

新基準が適用されるとどうなる?

新基準の適用により、2026年4月以降は新基準を満たすものしか販売できなくなります。変圧器のメーカーは、新基準が適用開始となる前に、モデルを刷新して新基準適合モデルの製造を進める必要があります。新基準適合モデルの製造に注力すべく、ほぼ全てのメーカーが現行基準に基づいた変圧器の製造を既に終了しました。

一方で、キュービクルを使用している企業には、以下のような影響が懸念されます。

  • キュービクル本体の交換・拡張が必要になることがある
  • キュービクルの設置場所が限られてしまうことがある
  • コスト面での負担が増す可能性が高い


それぞれについて、ご紹介します。

3-1| キュービクル本体の交換・増設が必要になることがある

ケースバイケースですが、キュービクル本体の交換・増設が必要になる可能性があります。変圧器のサイズUPにより、現在使っているキュービクル内の空きスペースによっては、新基準の変圧器を格納できなくなることがあるためです。

キュービクル内の空きスペースに余裕があり、変圧器を新基準適合品に入れ替えるだけであれば、工事は数日で完了します。しかし、キュービクル内の空きスペースに新基準適合の変圧器を格納できずにキュービクル本体の交換・増設が必要になった場合、工事には3カ月程度かかります

3-2| キュービクルの設置場所が限られてしまうことがある

キュービクルの設置場所が限定されてしまうことも考えられます。変圧器のサイズ・重量UPが、キュービクルの設置基準にも影響を及ぼす可能性があるためです。

キュービクルには、離隔距離(キュービクルと他の建物・設備の間に確保する必要がある距離)や重量に関する設置基準があります。変圧器のサイズUPに伴いキュービクルを交換・増設したい場合、設置できるのは離隔距離を確保できる場所のみです。また、変圧器の重量UPにも耐えられる設置環境でなければ、キュービクルを設置できません。

こうした理由から、「これまでの設置場所に設置できなくなる(移設が必要になる)」「屋内に設置したかったけれど、屋外に設置せざるを得なくなる」といった可能性があります。

3-3| コスト面での負担が増す可能性が高い

新基準の適用開始により、コスト面での負担が増す可能性が高いと考えられます。変圧器やキュービクル本体の購入費の他、各種工事費(交換・増設工事費、移設工事費、基礎の補強工事費など)もかかるためです。

4| なるべく早めに変圧器・キュービクルを買い替え・新規購入するのがおすすめ

なるべく早めに変圧器・キュービクルを買い替え・新規購入するのがおすすめ

2026年4月以降も、現行基準の変圧器やそれを搭載しているキュービクルを使用することはできます。あくまで製造・販売に関する規制であり、使用を規制するものではないためです。

しかし、古いキュービクルを使い続けるといつかは故障してしまいます。また、現行基準適合モデルよりも新基準適合モデルの方が、省エネ効果がはるかに高いです。具体的な数値としては、先述の通り、新基準の適用により基準年度(2019年度)の実績値に対して平均エネルギー消費効率が約11.4%向上すると予測されています。新基準適合モデルの買い替え・新規購入は、短期的には購入費用や工事費用などコストがかかるものの、中長期的に見るとお得であるといえます。

工事には時間がかかるため、なるべく早めに買い替え・新規購入に向けた対応を始めることをおすすめします。2026年4月前後には駆け込みで工事希望する会社が急増する可能性があるため、2026年3月末までの工事完了を目指しましょう。

ただし、設置環境や使用年数などによっては、増設・移設工事が難しかったり、急ぎでの工事が必要なかったりするケースもあります。その場合には、修理・点検を定期的に行いながら2026年4月以降も使い続けていくというのも、一つの手です。トータルソリューション株式会社では、変圧器やキュービクルの修理・点検などを行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。

5| 変圧器の新基準適用を見据え、企業がすべき対応

変圧器の新基準適用を見据え、企業がすべき対応

変圧器の新基準適用を見据え、企業としてすべき対応は以下の3つです。

  • キュービクルの変圧器の省エネ基準を確認する
  • 変圧器・キュービクルの交換・新規購入計画を策定する
  • 専門業者に相談や工事依頼をする


それぞれについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。

5-1| キュービクルの変圧器の省エネ基準を確認する

まずは、キュービクルの変圧器の省エネ基準を確認しましょう。現在お使いのキュービクルに搭載されている変圧器が新基準に適合したものであれば、買い替えや工事などが必要ないためです。

古い変圧器の大半は、新基準に適合していません。一方、数年以内に購入したものであれば、新基準を満たしているものも少なからずあります。

不要なコスト・工事の発生を避けるため、数年以内に購入した変圧器をお使いの場合には、省エネ基準をしっかり把握しておきましょう。

5-2| 変圧器・キュービクルの交換・新規購入計画を策定する

変圧器の交換または新規購入が必要な場合には、そのための計画を策定しましょう。

変圧器の交換に先立ち、まずはキュービクル内の空きスペースを見て、以下のどのパターンとなるかを考えます。

考えられるパターン

  1. 変圧器の交換のみ(キュービクルの増設・交換・移設は不要)
  2. 変圧器の交換+キュービクルの増設
  3. 変圧器の交換+キュービクルの交換(移設は不要)
  4. 変圧器の交換+キュービクルの交換(移設も必要)


その上で、「いつまでに」「どういったモデルを」「何台」必要とするかを検討します。次に、具体的な設置場所を検討しましょう。設置場所の検討に際しては、「変圧器のサイズ・重量UPに対応できる環境か(キュービクルの設置基準を満たせるか)」が重要なチェックポイントです。

これらについてある程度決まったら、希望する工事スケジュール(工事の施工開始・完了時期)について考えましょう。

5-3| 専門業者に相談や工事依頼をする

キュービクルの工事は、有資格者(第一種電気工事士)しか行えません。社内に有資格者がいない場合、有資格者が所属する専門業者への依頼が必要です。上で紹介した2つの対応を自社だけで行うのが難しいケースもあるでしょう。こうした理由から、専門業者に相談や工事依頼をすることをおすすめします。

業者を選ぶ際のポイントと業者に相談すべきことをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

5-3-1| 業者を選ぶ際のポイント

業者選びの際は、複数の業者から相見積もりをとりましょう。その上で、営業担当とのやりとりや業者のホームページなどから、以下のようなことを確認することが大切です。

  • 工事料金がどのくらいかかるか
  • 十分な実績があるか
  • 依頼した企業からの評判がよいか
  • 法定点検にも対応しているか
  • アフターサービスがしっかりしているか
  • 営業担当の受け答えに問題がないか など


これらの観点で総合的に比較検討し、信頼できる業者を選びましょう。

5-3-2| 業者に相談すべきこと

どういった相談に対応可能かは業者次第ではありますが、以下のようなことを相談すべきです。

  • 変圧器やキュービクルのモデル選び
  • 既存の設置場所への増設の要否
  • 移設が必要な場合の設置場所候補
  • 工事のスケジュール感 など


この他にも判断に迷うことやわからないことなどがあれば、業者に聞いてみるとよいでしょう。

6| 変圧器の新基準適用を見据え、キュービクルの買い替え・新規購入の検討を始めよう

変圧器の新基準適用を見据え、キュービクルの買い替え・新規購入の検討を始めよう

2026年4月から変圧器の新基準が適用開始となることで、変圧器を格納するキュービクルの交換・増設・移設などが必要になる可能性があります。新基準対応のキュービクルは、現行基準対応のものよりも、サイズ・重量がUPすると見込まれているためです。

変圧器の新基準適用を見据え、「現在使用している変圧器の省エネ基準の確認」「変圧器・キュービクルの交換・新規購入計画の策定」「専門業者への相談・工事依頼」をしましょう。

なお、工事には時間がかかるため、なるべく早めに買い替え・新規購入に向けた対応を始めることをおすすめします。駆け込みで工事希望する会社が急増する前に、可能であれば2026年3月末までに工事が完了しているように、スケジュールに余裕をもって専門業者に工事を依頼しましょう。

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トータルソリューション株式会社では、キュービクルの点検・修理・交換・移設・増設サービスを行っております。電気設備の老朽・欠損・不良箇所の改修工事はもちろん、 機能向上・グレードアップのための工事にも対応しています。アフターサービスも行っていますので、点検・メンテナンスもおまかせください。

また、全国対応も可能です。変圧器の新基準適用を見据えてキュービクルの交換・移設などをご検討される場合は、お気軽にトータルソリューションにご相談ください。

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